こんにちは☀️レモネードです。
3年くらい前に書いた小説で少々アレンジを加えたものを貼り付けたいと思います💦
(コロナ・サッカーW杯の時期です)
2000文字(原稿用紙5枚くらい)なのですが、沢山お時間ある方はよろしければ読んでみてください🙏💦
改めて読み返してみて、、「冗長」だなーーと猛省しています💦
何が言いたいのかも不明瞭で💦
時間があればまた何かしらリベンジしたいと思います。時間があれば!
よろしければ、ご批判やご感想など頂けたら嬉しいです。
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左サイドバックだった僕が、サッカー部の監督に退部届を出したのは、高校2年の夏休みが終わり、校庭の木々がオレンジ色に染まり始めた頃だった。あの瞬間は今でも忘れられない。
サッカー強豪校の夏は、コロナ禍でも容赦なく遠征を重ねた。僕は必死に、相手チームのフォワードのボールを止め続けた。左利きの僕は時に右足も動員し、時にレスリングのような体を張った競り合いもした。チームにはそれなりに貢献できたと思うが、夏の終わりには腰が悲鳴を上げていた。
診断は「腰椎分離症の終末期」。
何度もリハビリに通い、近所の整体院や接骨院もほとんど試した。治ると信じて怪我と向き合う覚悟もしていた。でも、どの医師からも返ってくるのは悲観的な言葉ばかり。僕の将来を案じた両親は、監督と話し合う方向で動き始めた。
僕自身も、思っていたより早く決断した。
怪我を抱えながら、以前と同じパフォーマンスを続けることは無理だと、誰よりも僕が分かっていたからだ。
秋が深まった11月、僕は高校の図書館にいた。ワールドカップが大盛り上がりの最中でさえ、それを見るのが苦痛になっていた。
授業で使っている地理の資料集にふと目が留まり、窓際の椅子に座って、なんとなく読み始めた。
「藤井君? めずらしいね。」
顔を上げると、柔和な顔立ちでガタイの良い中年の男性が立っていた。数学の高橋先生だ。
「そうなんです。怪我で…サッカー部、退部することになってしまって。」
無理に笑ったつもりだったけれど、高橋先生には見抜かれていたと思う。僕は感情を隠すのが得意じゃない。一方で先生は、人の心を読むのが上手な人だった。
「君、確か将棋ができたよね?」
「はい。昔、祖父に教えてもらって…。でも、強くはないです。」
先月の修学旅行で、友達と将棋を指していた時に先生が声をかけてきたのを思い出した。
「ちょっと、ついてきて。」
先生は僕を、図書室の隣の小さな教室に案内した。狭いガラス窓の先に囲碁・将棋部の部室が見えた。乱雑に置かれた机の上には、将棋盤や囲碁の盤、オセロまで並んでいた。奥の席では1年生らしき二人が、真剣な顔で将棋を指していた。
先生は椅子に座り、僕にも向かいの席をすすめた。
「対戦してみないか?」
突然の誘いに戸惑った。
これは勧誘? それとも、図書室で勉強していなかったことを見抜かれて、暇つぶしに誘われただけ?
ともかく、僕はあっさりと負けた。
「ありがとうございました。」
もうこれ以上、敗北は味わいたくない。そう思って、そそくさと帰る準備を始めた。
「王手された時って、サッカーではどういう状況?」
先生が不意に尋ねた。
「シュートされた時に似てますね。」
僕は咄嗟に答えた。
「なるほど。じゃあ、金はディフェンダー?」
「そうですね…」
この夏、一緒に戦った体の大きなセンターバック・鈴木の姿が浮かんだ。
「銀は?」先生はさらに聞いてきた。
銀は分からなかった。「桂馬は?」
それなら答えられた。桂馬はハーフの田中だ。縦にも斜めにも飛ぶ動きが、どこか彼のプレースタイルに似ていた。
そこから僕は、他の駒にも仲間を当てはめていった。
香車は、自称“得点王”のフォワード・竹田。王はキーパーの山岡。ボランチの山崎は飛車か、あるいは角か……。
「でも、サッカーの動きと将棋のルールって、微妙にズレてるから難しいですね。」
苦笑いしながらそう言うと、僕は先生に尋ねた。
「先生は、どんな気持ちで将棋をされているんですか?」
「僕はね、戦国時代の合戦になぞらえて考えることが多いんだ。臨場感があるし、負けたくなくなるよ。」
先生の話を聞いているうちに、将棋盤が戦場に見えてきた。川中島の戦いか、三方ヶ原か。「王」が武田信玄に見えてくる。甲斐の武将たちは、どの駒にあたるのだろう?
駒の一つひとつが個性を持ち始め、なかでも鎧をまとった「角」は、とても強そうに感じた。
ふと思った。先生の教科は数学だ。
「数学的にも考えられますか?」
「実はね、ベクトルで駒の動きを考えることもあるんだ。」
僕は将棋の駒の動きを、ベクトル関数で捉え直してみた。
AIのようにすべての駒をベクトルの集合として見ると、個性は消えるが、動きのパターンは無限に広がる。何手先まで読めるだろう?
「それに、これも見てごらん。」
先生は、横に置かれた囲碁の盤を指さした。
「何に見える?」
黒と白の石が入り混じった盤面。どこか奇妙で抽象的な形。
僕は混乱をした。
もしかしたらサッカーは囲碁の方が近いのかもしれない。攻守の切り替え具合がまさにこの白と黒のようだ。
振り返ると将棋盤の見え方もまるで絵のように見え始めた。
「黒をメインに見ると…牛の顔。白をメインに見ると…蛙が跳ねてるように見えます。」
「面白いね。」先生が笑った。
その瞬間、僕の中にあったわだかまりが、少しだけ溶けた気がした。